2005年9月10日
「グレート・ディープフォレスト・ダウンヒル・ツーリング」
ほんとうに、下って、下って、下りましたディープフォレストツアー。こんなに距離が長く下れる場所はなかなかありません。
その感動のレポートを、親子ファミリーで参加された山下(ハハ)さんが綴ってくれました。
※写真をクリックすると拡大します。
今日は山梨県某所で行われる「ディープフォレストツアー」。なんかとってもネーミングがいかしている。
私たち家族にとっては久しぶりのツアーである。気合が入る。気合が入ったのは私たち家族だけでは無い様で、ツアーの参加者全員、集合時間より集まりが妙に早いのだ。
ハジメさんからツアーの前に素敵な提案があった。「参加者の行いが善いので予定より早く出発して、ツアー開始の場所よりもう少し上に上がって絶景を楽しみませんか。」みなさん一も二も無く賛成である。
目的地にたどり着くと標高が高いだけあって眺めが最高!!あんなに高いこの山の頂上がものすごく近くに見える。右手に八ヶ岳、正面から左手にずっと南アルプスが続いている。ふと足元を見るとものすごい斜度。こんなところを走ろうと思うのはきっとハジメさんと相ちゃんしかいない。私なんかは完全に滑落の世界である。

予定した駐車場に車をデポし、自転車を組み立て、今日のツアーの説明を聞く私たちはどうもこの場所では奇異な集団のようだ。観光バスの運転手さんとガイドさんが怪訝そうに私たちを見ているが、気にしない気にしない。
駐車場から少々車道を登ったところからトレイルへとアクセスしツアーのスタートである。
バイクに跨り下り始めたとたんに私の頭の中は真っ白けっけっけ〜。
ハジメさんの「始めにガツンと下ります。」との説明どおりに結構な斜度。ガレている上に子どもの頭ほどもある浮石もゴロゴロしている(ように私には見えた)。「60cmくらいのドロップオフがあります。」ってハジメさん言っていたけど、その場所がどこだかわからないくらいに必死に下る。久々の下りで全身硬直状態のまま、前を走る息子のお尻を必死に追いかけ、後ろから煽る旦那を振切るので精一杯。周囲の景色に目をやる余裕がないのだ。
こんな調子で下りが20kmも続いたら耐えられましぇん。ハジメさんに泣きつきますが「先週の台風の影響で、この路面は予想外です。」って半笑いですよ、ハジメさん。

小休止の後からは今までより格段に走りやすいトレイルが続く。途中溶岩質のスリッピーな箇所や大きな倒木が道をふさぐような箇所も幾つかあるが、気持ちよく走れるのだ。とにかく下る下る下る。
ようやく我を取り戻した私は走りながら周囲を見渡す余裕がやっと出てきた。と、そこには木、木、また木。まさに樹海の中に一本のトレイルがずっと続いている信じられない風景が目の前にある。今、目の前に北京原人やネアンデルタール人なんて現れたっておかしくないようなそんな森である。まさに「ディープフォレスト」。鳥の声と自分のタイヤ、そよいでくる風の音だけが耳に入ってくる。暑くもなく、寒くもない。トレイルは狭くもなく広くもなく、まさに理想的で快適なのだ。走っていて「チョー気持ちいい!」としか表現できない。バイクを始めてから今までに感じたこともないような感覚!!「すんばらすぃ!!」思わず叫ばずにはいられない。

ふと気がつくと先頭の「飛ばし屋(ハジメさん)」集団からは置いてかれ、後方の「うちの息子のペースにあわせて走れる(相ちゃん)」集団とも違うペースで走る私は完全なソロ状態。あ〜、最初の注意事項で「道は基本的に一本道ですが外れないでねっ。外れても探しにいかないからねーっ!」っていっていたっけ。そうだ、ここは一度迷ったら二度と出られないことで超有名な大きな大きな森のど真ん中。必死に前の集団のタイヤ痕を確認しながら走る。でも、トレイルがあまりにも気持ちよいので迷子の心配なんてあっという間に忘却の彼方へ飛んでいってしまう。一緒に参加したはずの息子も旦那も私の頭の中からはすっかり無くなって顔が緩みっぱなしの状態になってひたすら下るのである。
お昼も過ぎてフォレストツアーも中盤に差し掛かったころ、先頭のハジメさんが「ここ、ちょっとヤバイポイントなんだよねー。」と顔を崩してうれしそうにみんなを迎えている。こういう顔をしているときのハジメさんの後にくっついて行くと本当にヤバイのだ。バイクを置いてちょっと道を外れる。ふと前を見ると大量のかわいらしいリュックが置いてある。そして足元には天然記念物の大きな穴がぱっかりとあいているではないか。その大きな穴の底にまたぱっくりの地底へ向かう穴が開いていて、荷物の主たちはその穴の中に吸い込まれていっている!!なんだぁ!?森の中で初めて出会った自分たち以外の集団はかわいらしい小学生たちだった。ヘルメットに手袋、似て非なる集団である。
穴の中に降りていくと、とにかく涼しくて気持ちいいのだ。穴の中から見上げる木々の美しいこと、岩の間から滴り落ちる水滴の涼やかなこと。さすがハジメさんの「激ヤバポイント」はやっぱりすごい!!マイナスイオンでリフレッシュ。さあ、まだまだ走るぞ!

地底人なんかがいたってみんな納得できちゃう様なところに別れを告げ再び走り出し、目の前に現れた車道を横切ってまた森に入っていく。ずいぶんと緩やかなトレイルになっているが、まだまだ顔にしまりの無くなるほどのオイシイトレイルが続いている。
長い長い下りが終わり舗装路にでた瞬間、私はとんでもない光景を目にしたのだ。なんとハジメさんがタイヤの点検と偽ってチューブ交換しているではないか。パンク疑惑発覚!!忘れていましたが最初にパンクしたのは最後尾を走る相ちゃん。今回のツアー中パンクはこの二人を含めて4名。「気圧のせい?」なんて言い訳も聞きましたが、次回からは皆さんスペアチューブはお一人様2本とさせていただきます(ウソッ)。
「これでもかっ!!」てなほどの極上の下りに別れを告げ、今度は横方向に舗装路を少し走り再び森へと戻っていく。ここから登り下りを繰り返しながら朝集合した湖畔の駐車場へ向かってい行くらしい。下り天国の後のアップダウンは思った以上につらい。でも、なんとなく里山を走っているようでこれはこれで気持ちよいのだ。今日のツアーは出だしのワイルドなガレ道のDHパート、その後の極上の森林トレイルパートと、アップダウンを繰り返すXCパート。そんな一度のツアーで三度も楽しい「お得!」感がふつふつと沸いてきた。いや、途中の「激ヤバ風穴」ポイントを入れれば一日のうちに四度もおいしい思いをしたのだ。主婦の私は「お得!」が大好きだ。「お得だ!」そう思ったら、いつもなら恐怖のあまりにカタツムリのようにゆっくりしか下れない階段も、笑いながら一気に駆け下りてしまった。後ろで旦那の目が驚きのあまりまん丸になっている。ディープフォレスト「お得!」ツアーは侮れないのだ。

最後の小休止でハジメさんが「もう少しでゴールですから。」とみんなに声をかけると「自転車乗りの『あと少し』って絶対に長いんだよね〜。」と総ブーイング(注:疲れたところにきて、アップダウンのコースがきつかったので)。でもその声が「もっともっと走らせろ〜!!」に聞こえるから不思議だ。もう時間なんて感覚は森の中に忘れてきてしまったようだ。
残念ながらハジメさんが言ったとおり最後の湖畔のシングルトラックパートを抜けると、朝集合した駐車場に実にあっさりと到着してしまった。一日かけて20kmものトレイルを走ってきたのに、面白すぎて疲れなんて全く感じない。誰かさいころを振って「ふり出しにもどる」をだしてくれぇ、もう一度今日が朝から始まらないかとありえないことを願ってしまった。
長〜い極上のディープフォレストトレイルは、その晩布団に入っても口元が締まらないくらい長〜い余韻も楽しませてくれたのだ。
== SPECIAL THANKS ==
Written by Yamashita-Mam